螺ス倉庫

ほぼ倉庫

羊執事 彼の名は―

私のグダグダなお話に付き合ってくれる方への予備知識↓
この話は私がオリキャラ紹介サザン&ミイやん編のオマケとして描いた
羊執事の絵から友人が想像して作った世界でのお話です

羊執事は政府が実施した「ひつじ執事導入計画」によって生まれた生き物であり
姿は人間に近いが角があったりして大抵は見た目で羊執事かどうかわかると思われる
その計画が実施された理由は(以下友人の文コピペ)
一番の原因はここ数年前の執事減少危機。執事が何者かに大量暗殺されるという事件が相次いだ、というものだろう。大量暗殺の犯人がまだ捕まっていないことに身に危険を感じた人間たちは、長年の研究を経て、動物の執事化というものに成功。その犠牲になったのが私たち羊である。あらゆる動物で試した結果、残念なことに羊だけがそれを可能にしたらしい。
しかしどんな羊でもいけるわけではなかった。適合するものとしないものがあり、ゆえに、その数は少なく販売価格はもちろん、億を軽く超える。
という感じです^^;
あ、ちなみに友人は「ひつじ執事」と表記してます(私は「羊執事」)
特に理由はないけど←

で、私のとこの羊執事の設定がこちら↓
名前:ハロルド・ロウ・シーメリヤ
外見年齢:23〜28歳
性別:男
仕えることが好きなだけの羊執事
そのため主人に執着することはない
人間嫌いである
常に笑顔を絶やさないが口から吐かれるものは毒ばかり
たぶんドSw
菜食主義だが料理は大概作れる(肉料理含む)

こんな感じの人です^^;
すごいやつになっちまったものだなぁ・・・
今回はハロルド中心の話です
暗い、というかダークというかそんな感じです
あと、人によっては不快に思う表現があったりすると思います
そういうの嫌だわと思った方は見ないことをお勧めします
では、前置きが長くなりましたがどうぞ!




「お前のことが知りたい。何か話せ」
 唐突に新しい主人から発せられた言葉にハロルドは少々言葉を失った。というのも
人間は自分たちを家畜と変わらぬ目で見ていることが多いためか彼らに興味を持つ者など
いなかったからだ。ハロルドは眼鏡を指で軽く持ち上げると笑顔のまま質問した。
「私のことが知りたいと言われましても、一体どこから話すべきなのでしょうか?」
 「主人の命を守る」、そして「自らの命を絶つ」という命令以外は絶対に従うと決めている
ハロルドにとっては自らの過去を他人に曝すことなど全く気にすることではないようで、ただ
見た目の歳よりも少し長い半生のどこを話すべきかについて主人に疑問を投げかけるのみだった。
「そうだな、羊執事専用のブラックリストに載るほどの見事な主人の捨てっぷり。その主人への
 執着のなさが身についた理由となる部分が知りたいかな」
 仕えた主人の病死を除く死亡率があまりに高すぎると羊執事専用のブラックリストに載り、
載ってしまった者は一生それ専用の羊執事によって命を狙われるという。目の前に立つ
新しく「買った」羊執事は仕えた主人の死亡率が異様に高いことで金持ち層の間で有名だった。
そんな羊執事をうまく「使いこなせるか」ということで一部の金持ちたちに買われることが多いため
彼はブラックリストに載っていてもいまだに生きながらえ、職にありついている。
「・・・まさか元からそういう性格なんじゃないだろうな」
 少し間をおいてから主人はハロルドをいぶかしげに見た。そんな主人の様子に笑みを浮かべ
手を横に振って否定する。その目は全く笑っていないのだが。
「いえいえ、そんなことはありませんよ。ただ、1人目の主人に仕えたときにこうなってしまったので
 性格とも言えなくはないのですがね」
 軽く息を吐いた後、ハロルドは自らの過去について話し始めた。瞳に少し暗い影を落としながら―

 
 背後から鞭の音がする。何に向けて打ちつけているかというと、オレの背中にだ。何回こいつは
オレを打てば済むのだろう。たまに来る強い痛みに顔をゆがめ、うめき声を漏らすと下品な笑みを浮かべる。
 ―気持ち悪いったらありゃしない
 羊執事導入計画が実施されてすぐに羊執事にされたオレは執事としての教育を受けて間もなく
この主人に仕えることとなった。主人は簡単に言うとマフィアだった、しかもかなり大規模な。
 よほど金に困っていないのかオレと同じ羊執事を何人か見かけたことがある。そのうちの半分ほどは
二度と動かなくなっていたが。他の同族も同じ目にあっているのだろうか・・・
 しばらく痛みに耐えていると鞭の音が止まった。どうやら「お仕置き」が終わったようだ。
今日は掃除の際にホコリがほんの少し残っていたことで叱られた。「執事」として完璧な仕事を
するように心がけている身としては叱られても仕方ないとは思うが、やはりこの「お仕置き」は
胸糞悪い。下品なあの顔を見たくないから四つん這いのまま顔を伏せていると無理やり顔を向けさせられる。
そっちの方が苦痛だから今ではちょうどいいタイミングで顔を向けてやっている。我ながら慣れたものだ。
 主人が愉快そうに下手くそな口笛を吹いて部屋を出ていくとオレはさっさと立ちあがり、
背中が破れたままのシャツの上からベストを羽織り少し間をあけてから同じように部屋を出た。

 主人を殺したいと思うことがなかったと言えば嘘になる。だが、その殺意はなくならざるを得ない。
 オレたち、羊執事は羊から羊執事になる際に「制御印」というものを体に刻まれる。それは人間が
人間よりも肉体の回復が早く、寿命も長いというオレたちの強大な力を恐れたが故に刻まれるのだ。
 制御印はオレたちが主人を殺そうとした時に働き、逆に俺たちを半殺しにするやっかいなものだ。
そいつのせいでオレたちは為す術もなく人間にされるがままでいるしかない。人間というのはどこまで
自分の思い通りにしたいのだろう。あぁ、鬱陶しい。

オレは部屋を出てからまっすぐに自分の部屋へと向かった。背中部分がやぶけ、血が滲んだシャツでは
どうも気持ちが悪い。
 服を手早く着替え、自室を後にする。あまり自分の部屋にはいたくないからだ。オレの部屋は
はっきり言って汚い。オレ自身で散らかしたのではなく元から汚れた部屋を与えられたのだ。
綺麗にしようと試みたが、日当たり等の関係でどうも綺麗にはならない。だから着替える時と寝る時
ぐらいしかここにはいようとしなかった。
 次の仕事は何だったかと考えながら歩いていると肩に小さな衝撃が走った。これが主人だったら
たまったものじゃないとすぐさま振り返るとオレより少し小柄な羊執事が同じように振り返っていた。
「あ、あなたは」
 相手が驚いたようにオレを見るが、オレには相手の顔に覚えがなかった。
「えっと、オレと会ったこと、ある?」
「いや、ボクがよく君を見かけることがあったから・・・」
「見かける?」
 オレの中にさらに疑問が増えていった。
「あの、ボクはご主人様の身辺警護担当なのでお食事中や移動中に見かけることがたびたびあったんですよ」
 オレたちの主人はオレたち1人1人に担当を決めていて、オレは食事や掃除などの家事・雑用の担当にあたっていた。
「あの、ボクあんまり他の羊執事と話したことがなくて、だから話せてよかったです」
 やや幼げな印象を与える全体的に短めな髪を揺らしながら目の前の羊執事は笑っていた。頬に
大きな痣を作りながら。
「ボク、ロウっていいます。また会えたらお話しませんか」
 目の前の違和感に呆けているうちに羊執事、ロウはニコニコと笑いながら話し続けた。
「オレはハロルド・シーメリヤだ。そうだな、また会えたら」
 短い会話を終えてオレたちは誰に言われるわけでもなく各自の仕事に向かって行った。
 再び会うのはそう難しいことではなかった。
 
「あ、ハロルドさん!」
 次の日の夜、仕事が一段落したため屋敷の裏庭で空を眺めていたオレに声をかけてくる奴がいた。
その名前を呼ばれるのは久しぶりだ。
「ロウか。お前も休憩か?」
「そろそろ寝るつもりだったんですけど、もしかしたらハロルドさん、いるかなぁって」
 相変わらず屈託のない笑顔を浮かべるが、その顔には昨日よりも痣が増えていた。またあのクズに
殴られたのだろうか。それなのにどうして笑顔でいられる・・・?
「あの、ハロルドさん!ハロルドさんって何て言う種類の羊なんですか?」
 いろいろなことに興味津々の子供の様な笑顔を向けて聞いてくる。
「いや、オレは普通にどこにでもいるような種類の羊だけど。ロウは?」
「ボクもふっつーの種類なんですけど、角が生えない種類みたいで・・・ハロルドさんの
角がうらやましいです・・・」
 先ほどの笑顔とは一転して今度は落ち込んだ様子を見せる。表情がよく変わって見ていて飽きない。
「そういえば、なんでお前はオレのことをさん付けで呼ぶんだ?普通に呼べばいいものを」
 この日を境にオレたちは休憩時間や寝る時間を利用して一緒に過ごし、様々なことを話し合った。
 外の世界をほとんど知らないのに不思議と話のタネが尽きることはなく、気がつけばオレはロウと
いる時間がとても楽しくなっていた。それと同時にロウといると心が落ち着いた。それをロウに話すと
「それは自分たちが友達だから」と教えてくれた。友達、その響きが妙に嬉しかったのを今でも覚えている。

続く

これ、長くなりそうなので途中で切ります^^;
前編、後編という感じになりそうです

ちなみに、当時のハロルドは眼鏡かけてないです(^^ゞ

ではでは、続きはまた今度ということで